住宅の沈下被害や振動被害の解決を支援します

Backup for Housing Subsidence damage and Vibration damage.

建設工事の被害

近隣の建設工事による地盤沈下や振動で建物(住宅)に被害が出る場合があります。

「住宅被害」「沈下被害」のページをご覧いただき、以下の発生メカニズムの該当するような損傷があり、かつ、地盤の良くない地域で以下に該当するような工事が近隣で行われた場合。また、1981年以前の旧耐震建物で、近隣で解体工事やくい打ち工事等の大きな振動があり、以下に該当するような損傷がある場合は、建設工事による影響の可能性が考えられます。

ここでは建設工事による地盤沈下(地盤変動)の影響範囲や工事振動の大きさ、住宅被害の発生経緯などについてご紹介します。

建設工事による沈下被害の発生メカニズム

建設工事による沈下被害は、(1)地盤の不同沈下→(2)基礎の不同沈下→(3)沈下に伴う基礎の変形と損傷→(4)上部構造(軸組)の変形→(5)各部位の損傷発生 このような経緯をたどります。

建設工事による地盤沈下は後述の通りある範囲に限られますので、地盤は不均一に沈下し不同沈下となります。住宅の基礎は浅い地盤で支持する直接基礎のため地盤が不同沈下すると基礎も不同沈下します。

基礎に変形が生じると上部構造にも変形(歪み)が生じるため、壁や建具などにひび割れや隙間等の損傷が生じます。

このため、そもそも以下に示す建設工事の影響範囲外では被害は生じませんし、地盤に沈下が生じても杭基礎などの場合は基礎に沈下が生じませんし、基礎に不同沈下が生じても変形やひび割れが生じなければ上部構造に変形は生じず損傷も生じません(一体傾斜)。

逆に、この経緯をたどり、各現象を再現することで建設工事の影響を判定することができます。

   
      

工事による沈下被害のポイント

建設工事による沈下被害の発生は上記の通りですのでポイントはこのようになります。

単に建物に沈下傾斜が生じているだけではなく、工事周辺を観察して建物以外に客観的に沈下が生じている現象(例えば土間や縁石等のひび割れや隙間など)はないか?の確認が重要です。また以下に示す方法などで、これら損傷が工事による影響範囲のみに生じているか?この範囲は建物に及んでいるのか?を確認します。

建物の不同沈下の測定は「沈下被害」でご紹介した通りで、建物の変形状態の確認と、基礎にひび割れ等の損傷が生じているのか?の確認が重要です。

以上が確認できて、上記の図のように建物の変形に関係する損傷が被害であることになります。

開削工事の影響範囲

地表面から掘削する工事を開削工法と言います。よく「掘削による影響範囲は掘削底から45度の範囲(掘削深さと同距離)」などと言われますが、地盤条件によってはこのようにもっと広く生じます。

掘削工事では、通常、土留め(矢板)を用います。この図ではこの土留めに変位が生じる深さD2を対象としていますが、通常は土留めを引き抜きますので、土留め先端深さから影響範囲を考える必要があります。

この場合、砂質土では土留め長さと同じ距離、粘性土地盤では土留め長さの1.41倍の距離が影響範囲になります。

例えば、掘削深さが3ⅿでも、土留が6mの場合、砂質土地盤なら掘削位置から6ⅿ、粘性土地盤なら約8.5mが影響範囲になります。

一般には単一地盤であることは少ないので、この中間程度(または案分)を考えれば良いと思われます。

この影響範囲の終端で沈下は収束しますので、ここから掘削箇所に向かって不同沈下が生じます。また、この終端付近は沈下が「生じない」と「生じる」の境界ですので、前述の「土間や縁石のひび割れや隙間」が出始める位置になりますので、現地を良く観察すると客観的な影響範囲がわかります。

          

※地盤工学会「近接施工」平成23年1月

 

シールド工法や推進工法の影響範囲

地表面を開削せず、立孔からトンネル式に掘削する工事にシールド工法や推進工法があります。これも「管底から45度の範囲」などと言われますが、このように地盤の良くないところ(沖積粘性土地盤)では、この範囲の1.5~2.0倍の範囲に及びます。

例えば、土被り(管上部の深さ)10m、管径4mの場合には管底深さは14mですので、影響範囲は21~28mということになります。

シールド工法や推進工法の沈下は、掘削直上が最も大きく、この範囲内にsinカーブを描くように生じます。影響範囲の終端では開削工事と同様ですので現地の観察で損傷発生を確認することができます。

※土と基礎「シールド工法と土質6.地盤沈下(1)」竹山喬ほか 土質工学会 1978.4

盛土による影響範囲

見落としがちなのが、この盛土による周辺地盤の沈下です。軟弱地盤(沖積粘性土地盤)上に盛土をすると、この盛土荷重により軟弱地盤が圧縮沈下(圧密沈下)し、周辺地盤も引き込まれるように不同沈下します。

例えば、1mも盛土すれば、その荷重は2階建建物よりも荷重度は大きく、また通常、敷地一杯に盛土するので影響度は大きくなります。

この図のC1は沈下量係数、C2は隆起量係数、盛土中心の沈下量Sが最が大きく、これに係数を乗じて沈下量や隆起量を求められます。また、C3は沈下や隆起が及ぶ距離の係数で、軟弱地盤厚さHを乗じて求めることができます。

盛土中心の沈下量Sを求めることは難しいですが、軟弱地盤層厚は地盤調査結果があれば、H=「N値2回以下の地盤深さ(最下端)」から知ることができます。例えば、軟弱層厚Hが8mなら沈下が収束する距離係数は1.5ですので、盛土端部から12mが影響範囲であることがわかります。

※日本道路協会:道路土工軟弱地盤対策工指針(平成24年度版),2019.10

 

建設工事による振動被害

建設工事による振動被害の発生メカニズムは「振動被害」で解説した通りで同様です。また、ここでも解説した通り、振動被害の損傷は、経年変化による損傷と良く類似してため、難しい問題になります。

すでに解説しました通り、建設工事の振動被害でも、(1)工事による到達振動の大きさ、(2)建物内の増幅程度、(3)建物の耐震性能(剛性)がポイントになります

また、振動被害は振動による微小変形に追随できない仕上げ面に損傷が生じるものでですので、変形が易い建物構造なのか?変形が生じる下地材なのか?靭性(追随性)の乏しい仕上げ材なのか?が問題になります。

例えば、浴室腰壁タイルのひび割れは、通常下地はコンクリートやブロックなので変形は生じません。サイディングや合板類は下地に変形が生じても損傷に至ることはなく、これら損傷は振動被害とは考えられません。

建設工事による振動被害の苦情は非常に多いですが、よほど古い建物や増幅が多い建物以外、解析をすると影響が認められないことが多いです。

建設工事振動の大きさ

現在の建設工事では、建設重機を使う工事が一般的です。近年では、振動規制法の強化などにより低振動型重機の採用が一般的ですが、それでも建設重機の質量とパワーは大きく、軽い木造建物を揺らすには十分な振動源になります。

ここには代表的な建設重機別の振動の大きさを示しましたが、建設工事の発生振動は、使う重機や作業形態で様々です。

例えば苦情の多い解体工事では、ブレーカー(破砕機)の使用は避け、ニブラー(圧砕機)の使用が推奨されていますが、基礎コンクリートをつかみ上げる時の振動や、コンクリート躯体を圧砕し地面に落下させてしまう時の振動は大きくなります。

また、バックホウ(油圧ショベル)はバケット容量が大きいほど重機質量も大きく、一般に発生振動も大きいですが、発生振動を小さくするつもりで、小さな重機を用いるとパワー不足で無理な作業となり、結果的に発生振動が大きくなることが良くあります。

高周波バイブロは振動数を高くすることで距離減衰が大きくなり遠方に伝わる振動は小さくなりますが、近い範囲の大きさはあまり変りありません。このため近年、杭打ち作業はサイレントパイラー(圧入機)を用いるのが一般的になりましたが、貫入不可や反力確保のために一時的にバイブロハンマーを使用する場合などが振動被害の原因(短時間の振動は人への影響は少ないですが建物被害は一瞬でも生じます)となる場合があります。

※環境省環境管理局大気生活環境室「よくわかる建設作業振動防止の手引き」