住宅の沈下被害や振動被害の解決を支援します

Backup for Housing Subsidence damage and Vibration damage.

住宅の沈下被害

規模の大きな建物と異なり、住宅は基本的に浅い地盤の上に建つ直接基礎なので、何らかの原因でこの支持地盤に不具合があると沈下が生じます。一様な沈下であれば不具合はないのですが、「住宅被害」の「沈下原因」で紹介しました通り、建物荷重や地盤の不均一さなどにより沈下量が異なると不同沈下となり様々な不具合が生じ、これを「沈下障害(沈下被害)」と呼びます。

建物の沈下傾斜を感じるようでしたら、かなり大きな沈下が生じているはずです。また一方で、壁のひび割れや建具の不具合などは沈下によるものばかりではないので、方向性を誤ると問題解決は遠のきます。とはいえ、沈下被害は深刻な問題にもなりかねませんので、早目の対処が肝心です。

ここでは「沈下障害」に関する基礎的な知識と沈下障害が生じた場合の対応(調査方法や修復方法)などについてご紹介します。

建物の沈下傾斜の形状(沈下形状)

建物に不同沈下が生じた場合の沈下傾斜の形状(以後「沈下形状」と呼びます)は、この図の上のように一体的に沈下傾斜する「一体傾斜」と、下図のように部分的に沈下傾斜する「変形傾斜」があります。

一体傾斜の場合、通常起こる沈下では、ひび割れなど構造的な問題が生じることはなく、傾斜角の発生に伴う建物の傾斜、床や柱の傾斜、排水不良、建具が自然に開閉するなど、上部構造の使用性や機能性などが問題となります。

一方、変形傾斜の場合は、傾斜角と変形角が発生するため、先の使用性や機能性の問題に加え、基礎および上部構造におけるひび割れや変形など構造耐力的な問題も生じます。

沈下障害を考える場合には、この「沈下形状」の判断と識別が重要になり、この時には「基礎の損傷の有無」が大きなポイントになります。

変形傾斜の場合には、必ず「基礎のひび割れ」が発生しますので、沈下傾斜が生じていても基礎のひび割れが確認できない場合には「一体傾斜」のはずです。建物の損傷原因は沈下ばかりではないので、その場合、建物に見られる損傷は、「住宅被害」でご紹介しているような「経年変化による損傷」など、沈下によるもの以外の原因と考えられます。一方、基礎のひび割れも沈下によるものばかりではないので、基礎のひび割れがある場合は後述しす沈下測定により相当の変形角が生じているかを確認することが必要です。

この辺の判断を誤ると、あらぬ方向に行ってしまい解決が難しくなりますので注意が必要です。

   
      

傾斜角と障害程度

傾斜角は2点間の不同沈下量をその距離で除して1mあたりの傾斜量のことで「φ=〇/1000」で表します。

単に傾斜が生じた場合には、建物や床の傾斜に伴い、「床の傾斜を意識する」「建物の傾斜により建具が自然に流れる」「床の排水管の排水不良」「床の傾斜に伴いめまいなど身体的不具合が生じる」などの障害があります。

このように傾斜角による障害は、使用性や機能上の問題であり、通常生じる沈下では、建物の傾斜だけでは建物にひび割れ等の損傷が生じることはなく、構造的な問題は生じません。

また、傾斜角による障害は、ある大きさに以上になって生じるもので、人が床の傾斜を感じるのは4/1000くらいから、身体的障害はかなり大きく10/1000を超える場合のようです。

これらから、傾斜角の限界値は、下限4/1000、標準6/1000、上限8/1000と考えられます。これを不同沈下量に換算すれば長さ10m程度の建物で40㎜(下限)となります。

変形角と損傷程度

変形角は3点間の沈下量からそれぞれ2点間の傾斜角の差が変形角(傾斜角の変化量)となり「θ=〇/1000」で表します。

傾斜量が変化するということは、建物に変形(歪み)が生じていることです。ひび割れなどの損傷の程度は変形量(角)の大きさに比例しますので、変形角の大きさと損傷程度を比較することで、沈下以外の原因による損傷を排除して沈下被害の程度を把握することができます。

しかし、変形角を求めるには精度良い沈下測定が重要になります。測定には誤差もありますし、測定箇所の不陸なども含まれますので、十分な調査を行いこれらを見極めて変形角を算出する必要があります。

これらから、変形角の限界値は、下限3/1000、標準5/1000、上限8/1000と考えられます。

 

沈下量の算出

住宅の場合、あっても外構との段差や引き込み配管の不具合くらいで、一様な沈下は建物被害について問題になることはほとんどなく、不均一な沈下=不同沈下量が問題になります。

また、「不同沈下量」と言っても、建物の大きさによってその評価は異なりますますので、不同沈下量を距離で除した「傾斜角」を扱う必要があります。

また、前述の通り沈下障害を考える場合には沈下形状を識別する必要があり(変形の有無の確認)、そのためには変形の程度(変形角)を求めることになります。

建物の沈下傾斜の測定は、基礎の天端を測定するのが理想ですが、実際に困難なので、基礎に近い堅固な床で測定し、傾斜角と変形角はこの図のようにして求めます。

傾斜角はこの図のように2点間(但し3m程度以下)の不同沈下量をその距離で除して求めます。また、変形角は隣り合う傾斜角の差から求めることができます

沈下傾斜測定

建物の不具合は建物内の様々なところで生じますので、沈下障害を把握するには「基礎(壁)の通り」ごとに、前述の傾斜角や変形角を求めることになります。

そのためには、この図のように基礎の通りごとに格子状に測点を配置して全体の高低差が把握できるような測定し、平面的な沈下変形状況を把握します。

今は、レーザーレベルで測定するのが一般的ですが、その場合でも見通しの効かない場合には「盛替え」を行いすべての測定を連続させ、また、床に段差がある場合はフラットな面を想定して測定値を補正します。

気泡・デジタル水準器は手軽で精度も高いですが、測定距離が短く、測定面の不陸の影響を受けやすいため、レーザーレベル測定の補足程度とします。

ご自身で測定されるようでしたら、「ここ」をご参考に

 

建物の沈下変形

建築物の鉛直方向の傾きは、気泡・デジタル傾斜計のほか、糸に錘をつけた下振りでも測定できます。このとき、下振りを吊る糸の長さと変位量を測定し,糸の長さ1mあたりの傾斜量(〇/1000)として記録します。

この図は、これら沈下傾斜測定の結果から、建築物の平面的な沈下および変形状況と鉛直方向の傾き、損傷状況を併せて表した例です。これらにより沈下形状と沈下程度を判断し,前述の傾斜角と障害程度、変形角と損傷程度を参考に実際の不具合程度と照合し評価します。

ただし、鉛直方向の傾斜(柱傾斜)は、建込み精度の問題から、建築時からすでに2/1000強程度のばらつきがありますので(床の傾斜の方が精度が良い)、これを考慮して評価する必要があります。

この沈下状況や不具合程度とともに、前述の不同沈下の原因例などを参考に,地盤条件などを勘案して沈下原因を判断します。

修復方法の選定の考え方

沈下被害では基礎の修復が重要となります。この図は、基礎の不具合事象別の発生原因と修復目的を示したものです。基礎の不具合は、ひび割れや欠損(以後,あわせて損傷と呼びます)と基礎の沈下に区分されますが、基礎が沈下したことにより損傷が生じるなど、実際の不具合事象は複合的な場合が多くあります。

以下に示すように、不具合事象に応じた様々な修復方法がありますが、その選定にあたっては、前述のとおり、不具合の発生原因を特定し、原因に対応した修復目的を設定することが重要です。

設計や施工の瑕疵が不具合の原因の場合は、建築時(契約時)の設定性能まで修復する必要があります。一方で、寿命の延長や耐震補強を目的とする場合は、耐久性や経済性などを考慮して、回復すべき性能についてあらためて設定する場合もあり、現行の技術基準とは異なる修復が行うこともあります。

修復方法の選定手順

基礎に関する修復工法の選定手順を示しました(図をクリックするとポップアップします)。基礎の修復は、基礎の損傷を修復する躯体修復工法と沈下修正工法に大別されますが、損傷と沈下が同時に生じている場合や、擁壁の変状を伴い地盤沈下などが生じている場合など、複数の目的を満足する修復計画の策定が必要となります。

特に、この修復方法の選定では、沈下修復を必要とするか否かの判断が大きなポイントとなります。沈下の継続性がないとき、一体傾斜の場合は、使用上・機能上支障がない程度では何の対策も講じないケースもあり得えます。また、変形傾斜の場合は、傾斜や変形の程度によっては、沈下修復をせず基礎躯体修復工法のみとすることもあります。

基礎の損傷状況と構造耐力、上部構造の仕口部の変形や隙間、内外装の損傷程度、建具の建付や開閉などの不具合程度、建具の変形や動きおよび床の傾斜の体感具合など、沈下傾斜の計測結果ばかりでなく不具合事象の程度などを勘案のうえ、総合的に検討して判断する必要があります。

なお、傾斜角および変形角と不具合程度の関係から、沈下修復を必要とする目安(標準)は傾斜角φ=6/1000,変形角θ=5/1000程度と考えられます。

各種基礎の修復例

前述の通り、基礎の修復方法には、基礎躯体修復工法と沈下修復工法があり、いずれの工法から、または併用するなどして、適切な工法を選定する必要があります。

これらの修復方法を駆使することで、多くの事象が修復可能ですが、修復費用が多額になる場合や、上部構造物へ不具合が及び、その修復が困難な場合は建替えを選択することもあります。

各工法の概要などの詳細については以下の各工法表を参照ください。

※画像をクリックすると各種工法の説明表と共に大きな図(pdf)が見られます。

基礎躯体修復工法

基礎の沈下を伴わない損傷については、上部構造の機能上の問題となることは少なく、基礎の劣化防止ならびに耐久性の向上を目的とする場合が多いです。これに対し、基礎の沈下が生じている場合、基礎躯体自体の性能向上や、地盤の支持力改善などを目的とすることが多いです。

基礎コンクリートの損傷は、鉄筋の拘束力の低下や、水分や酸素などの浸入による発錆に伴う耐力低下が問題となるので、これらを遮断して修復部が既存躯体と一体となるような施工が必要です。

時々、貫通したひび割れ部の表面をVカットして普通モルタルを充填するだけの施工が見られますが、肌別れなどして十分には一体化せず、鉄筋の発錆防止や耐力回復の効果はほとんど期待できません。

また、基礎の剛性不足などにより損傷や不同沈下が生じている場合には、損傷箇所を修復するだけでなく、基礎性能を向上させる必要があります。抜本的な対策は適正な形式・形状に基礎を再施工することですが、ここにある各種工法で剛性を向上させる工法もあります。

基礎底盤の拡張や布基礎からべた基礎への形式変更などのように接地圧を減少させる方法は、沈下の継続性がある場合に効果がある。ただし、べた基礎化は基礎重量が増加するので、必ずしも接地圧の減少にならない場合もあるので注意が必要です。

※画像をクリックすると各種工法の説明表と共に大きな図(pdf)が見られます。

  

沈下修復工法

沈下修復工法は、上部構造と基礎を切り離し土台から上をジャッキアップ(沈下修復)する方法と、基礎下から沈下修復する工法に大別されれます。

土台から上の沈下修復は、土台または柱に根がらみ鋼材を取り付けて油圧ジャッキでアップする根がらみ工法(f)と、既存基礎の一部を斫(はつ)り爪付きジャッキを挿入するポイントジャッキ工法(g)があります。

基礎下からの沈下修復は、建築物周囲から基礎下を順次掘削して基礎底盤下に油圧ジャッキを設置してアップする工法が多く、反力確保の方法により、耐圧版工法(h)、鋼管圧入工法(i)、ブロック圧入工法などがあります。

ブロック圧入工法は、鋼管圧入と同じように油圧ジャッキで縁石状のブロックを地盤内に圧入し、地盤の改良効果とともに反力を得る方法や、専用の連結型ブロックを所定の支持層まで圧入する方法があります。

注入工法(j)は、建築物周囲や床下から基礎底盤を穿孔して基礎下部へ薬液など注入し、沈下修復を行う工法です。注入材にはセメント系注入材と発砲ウレタン系注入材があり、前者は注入圧、後者は膨張圧により沈下修復を行います。また近年では耐圧版と注入工法を組み合わせたハイブリットな工法も見られますが、注入工法は精度や液材の逸散などの問題があり採用は慎重にすべきです。

       

※画像をクリックすると各種工法の説明表と共に大きな図(pdf)が見られます。